商魂たくましいレシピ本の策略にまんまとはまっているようでなんとなく癪な気もするが、菓子づくりもパンづくりもハマってくるとどうしても器具を揃えたくなってくる。
業務用器具店のサイトを眺めているだけでうきうきしてくるし、実際現場(かっぱ橋略してKPB)に足を運んだ日には、あれ?なんか肩と脚がすごくだるいぞと気付いた時には大量の荷物を提げて何時間も歩き回ったあとだったりする。まるで夢遊病じゃないか。
この日もふと、こんな商品が目にとまった。
へえ、山型食パンに最適なワンローフ型かあ。
食パン型は真四角のやつしか持ってないし、こんなのもあってもいいかもね。
それにしてもほんとに安いね、まいったなこりゃ。
と、ニヤニヤやにさがりながら購入ボタンをクリックしかけて、あれ?と気付いた。
うちに似たようなのなかったっけ?
新婚間もないころに到来した「第一次製菓製パンブーム」の折に、馬鹿みたいに買い漁ったパウンド型の中に、似たような見た目の型があったような気がしたのだ。
そして発掘されたのがこれ。
うーんクリソツ。
念のため寸法を測ってみると、多少の誤差はあるものの、5mmから1cm程度。
上の商品の「通常の1斤サイズよりも長辺が短く―」云々という条件は十分満たしている。
よくよく思い返してみれば、この型はパウンドではなく「ローフ型」として売られていて、食パンが焼きたくて購入したのだった。
当時の環境では食パン型なんてなかなかそのへんには売ってなくて(今でもそのへんには売ってない)いろいろ探し回って、普段めったに足を踏み入れない高級スーパーでやっと見つけて買ったのであった。しかるに値段もそこそこした。500円とかじゃなかった。
今まで捨て置いていたくせに、急に愛着がわいてきた。
よし、今日はこの素晴らしき再会を記念して、山型食パンでも焼いてみようじゃないか。
先日のイングリッシュマフィンとまったく同じ配合に白胡麻をプラス。
ホームベーカリーの「天然酵母パン生地」コースをセット。これも前回同様。
このコースは捏ね→一次発酵→パンチ→ベンチまでを自動でやってくれるのだが、自家製酵母生地の場合発酵時間はその時によってまちまちなので、パンチに入る前にちゃんと一次発酵が済んでいるか確認するか、あるいは捏ねが終わった時点で取り出してしまって、あとはボウルの中で自然発酵させてパンチとベンチは手動にするかのどちらかにするようにしている。
だが、この日はどっちも忘れて気が付いたら「ピー」という音とともに全てが終わっていた。
若干の不安を残しつつ、生地を二分割して再びベンチを取ってみると、その間にもちゃんと発酵が進んでいてしかも過発酵でもないみたいだったのでまあ大丈夫かな、と型に詰める。
二次発酵1時間。
ちょっと足りないかな。でもまあ大丈夫かな。とオーブンに入れる。
そして焼成。
山に、なっていない…。
たしかに見切り発車だったけど、もうちょっと釜伸びしてくれると思っていたのだ。
これは山というよりむしろ…と、ずーっと昔、演劇研究所の同期の男の子が
「僕のお姉ちゃんすっごい巨乳なんだけどね、寝るとおっぱいが横に流れちゃってね、ぺったんこになるんだよ!!」
とコーフン気味に話している姿を、なぜか思い出した。
横流れおっぱいパン、と命名。
粗熱が取れ朝を迎え(←宵っ張り)お弁当づくりの時間が迫ってきたのでとりあえず切ってみる。
目の詰まった断面を想像していた。しかし。
気泡がぽこぽこ。
パリパリの皮と気泡がいっぱいでもちもちの中身は、ソフトフランスの食感。
粉の配合でTYPE-ER(国産小麦のハードパン専用粉)が半分近くを占めているんだから、当然といえば当然なのか。
思ってたかんじとは違うけど、これはこれで、という仕上がりだった。
ただ「山食」を名乗るにはやっぱり形がねえ。
次回は二次発酵を心ゆくまで取って、釜伸びのいい1CWメインで作ってみようと思った。
それにしても、まったく同じ配合の生地なのに、成形の仕方が違うだけで(他にもいろいろ違ったのかもしれないけどずぼら過ぎてよくわからない)前回のマフィンとは全然違う食感になるなんて面白いもんだ。
だから型がほしくなってしまうわけよねーという弁解を、誰にするでもなく心の中でつぶやいた。
このへんのメリメリ感。
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